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※ 各回答は個別の事情によって結論が異なる場合があります。具体的なケースについては弁護士にご相談ください。
第1部 交通事故に関するQ&A
基礎知識
まずは「誰に賠償を請求できるか(責任の所在)」「どのような損害が発生しているか(損害の算定)」「誰の保険から支払われるか(損害の填補)」の3点を整理することが大切です。賠償金を適正に受け取り、納得のいく示談を成立させるためには、初期段階でこれらを漏れなく把握しておくことが解決への第一歩となります。
状況によっては運転手以外にも請求できる場合があります。加害者が業務中で会社の車に乗っていた場合は勤務先に「使用者責任」を、人の車を借りていた場合はその所有者に「運行供用者責任」を問えるケースがあります。相手の資金不足で示談や慰謝料の支払いが滞るリスクを防ぐためにも、誰に請求できるかを正しく見極めることが重要です。
治療・示談のタイミング
示談は、ケガが完治したとき、またはこれ以上治療しても良くならない「症状固定」の時期を迎えてから行います。事故直後に示談してしまうと、後から予想外の治療費が生じても追加請求できなくなります。治療費・慰謝料などの損害額がすべて確定してから交渉を始めることが重要です。
相手の保険会社が提示する慰謝料は、独自の基準や最低限の自賠責基準で計算されており、裁判例に基づく本来の基準(裁判基準)より低く設定されていることがほとんどです。提示された金額で安易に示談してしまうと、本来受け取れるはずの金額より少なくなる可能性があります。サインする前に、裁判基準に照らして妥当かどうか弁護士に相談するなどして確認することが大切です。
物損
残念ながら、新車代全額を請求することは原則としてできません。請求できるのは「事故当時のお車と同等の中古車の時価額」と「買替諸費用」が限度となります。なお、修理費が車の時価を上回る場合も「経済的全損」とみなされ、時価額等までの支払いとなります。もっとも、保険会社の提示額が常に正しいとは限りませんから、価格が適正かどうか弁護士に相談するなどして調査することが大切です。
修理や買替えに必要な相当期間について、代車費用(レンタカー代など)を請求できます。かつては修理の場合は2週間程度、買い替えの場合は1か月程度が目安とされていましたが、最近は車の修理や調達に時間を要することもあり、それより長く認められるケースもあるようです。
過失割合
過失割合とは、事故の当事者双方にどれくらい不注意(過失)があったかを示す割合です。ご自身にも過失があると判断された場合、その割合に応じて請求できる治療費・慰謝料などの賠償金全体が減額されます(過失相殺)。過失割合は、東京地方裁判所が発行している別冊判例タイムズ39号の基準を事故類型ごとに参考にして判断されますが、基準に当てはまらないケースや修正要素がある場合もあり、争いが生じることもよくあります。
警察が作成する実況見分調書や物件事故報告書が基本資料となります。近年はドライブレコーダーの映像なども極めて有力な証拠となります。映像データは時間が経つと上書きで消えてしまうことがあるため、事故後はすぐに保存しておくことが大切です。
時効
はい、損害賠償請求には消滅時効があります。ケガなどの人身損害は原則5年、車の修理代などの物的損害は原則3年で時効となり、請求できなくなります。治療が長引く間に物損の時効だけが先に迫る危険もあるため、期間内に示談をまとめるか、法的に時効を止める手続きが必要です。
保険
相手が任意保険未加入でも、車を運転する方が必ず加入する「自賠責保険」からケガの治療費や慰謝料を受け取ることができます。ただし自賠責保険には支払上限額(傷害で120万円)があり、車の修理代は対象外です。不足分は加害者に直接請求するか、ご自身の自動車保険(人身傷害保険など)を活用してカバーすることになります。
ご自身の自動車保険に「人身傷害保険」がついていれば活用できます。過失割合に関係なく、契約で定めた限度額の範囲内で治療費や慰謝料などの実際の損害をカバーしてくれます。相手が無保険の場合や、過失相殺で相手からの賠償金が減ってしまう場合でも補償を受け取れる有効な制度です。
労災・健康保険
はい、交通事故の治療でも所定の届出(「第三者行為災害届出」「第三者行為による傷病届」)を出せば、労災保険・健康保険は利用できます。相手が任意保険未加入の場合や、保険会社から治療費を打ち切られた後も通院を続けたい場合などに活用すると、自己負担を抑えて適正な示談に繋げやすくなります。なお、労災保険が利用できるときは、健康保険の利用はできません。
紛争解決
裁判以外にも、日弁連交通事故相談センターや交通事故紛争処理センターなどの公的な「裁判外紛争解決機関(ADR)」を利用する方法があります。専門家が間に入り、客観的な基準で適正な慰謝料などのあっせん案を出してくれます。無料で利用でき、裁判よりも早期解決を目指せるのが大きなメリットです。それらの機関でも弁護士に依頼することでより有利な解決が期待できる場合もあります。
交通事故の被害に遭った際、加害者への賠償請求を専門家に依頼する費用を保険会社が負担してくれる制度です。この特約を使えば、弁護士費用の負担を軽減して、不当に低い慰謝料など賠償額の提示に対しても裁判基準による適正な示談交渉を追求できるようになります。ご自身の保険証券やお手持ちの保険会社にご確認ください。
はい、治療が長期化したり慰謝料などの条件で対立が続いたりすると、相手の保険会社側から「債務不存在確認訴訟」などの裁判を起こされることがあります。ご自身に不利な条件で判決が確定してしまうのを防ぐため、通知が来た場合は絶対に放置せず、すぐに対応を検討することが不可欠です。
第2部 債務整理に関するQ&A
債務整理とは
債務整理の方法には大きく三つあります。①任意整理、②自己破産、③個人再生です。
【任意整理】裁判所を通さずに債権者と交渉し、負債を3年〜5年程度の長期分割で支払う方法です。
【自己破産】財産があればお金に換えて債権者に分配し、払いきれない残りの部分については「免責決定」という支払わなくてよいとする決定を裁判所からもらう手続きです。
【個人再生】債務を大幅に圧縮した上で3年〜5年程度の分割払いで返済する手続きです。なお、自己破産と個人再生は裁判所に申立てを行う手続きとなります。それぞれの方法は、収入・財産・借金の総額・家族構成などによって向き不向きがあります。
共通事項
選択の目安として、継続的な収入があり借金総額を3〜5年で返済できる見通しがあれば任意整理、返済が困難で財産も少ない場合は自己破産、マイホームや車など守りたい財産があり一定の収入がある場合は個人再生が候補となります。ただし収入・財産・借金の種類・保証人の有無など、さまざまな事情によって最適な方法は異なります。
任意整理・自己破産・個人再生のどの手続きを行っても、信用情報機関に事故情報が登録されます(いわゆるブラックリスト)。約5年から10年間は新しいクレジットカードの作成や各種ローンの利用が難しくなります。クレジットカードが利用できなくとも、現金やデビットカード、チャージ型の電子マネー等を利用して工夫することが考えられます。
銀行のカードローンを債務整理の対象とする場合、受任通知を送るとその銀行の口座が一時的に凍結され、預金と借金が相殺されてしまいます。これを防ぐため、手続きを進める前に給与振込先を別の銀行口座に変更し、現在の預金を引き出しておく必要があります。給与や生活費に影響が出ないよう、事前準備のタイミングを計ることが重要です。
任意整理
任意整理は、裁判所を通さずに債権者と交渉し、無理のない返済計画に立て直す債務整理の方法です。将来発生する利息や遅延損害金をカットする交渉をし、元金だけを3〜5年程度で分割払いできるよう交渉します。また、過去に払いすぎた利息(過払い金)が見つかれば、借金が大幅に減るケースもあります。
借金の総額を概ね3年(36回払い)で完済できるだけの返済能力があるかどうかが一つの目安となります。毎月安定した収入がある給与所得者の方は、返済計画が立てやすいため任意整理に適しています。家計全体の状況を踏まえて、本当に無理なく返済を続けられるかを見極めた上で方針を決めることが重要です。
任意整理は自己破産や個人再生と異なり裁判所を通す手続きではないため、官報に名前が載ることはありません。弁護士が代理人として受任通知を送ると、貸金業者からの督促や取り立てがストップします。書類のやり取りや業者との連絡も弁護士が窓口となるため、ご家族や勤務先に知られるリスクは比較的低い手続きといえます。
自己破産
裁判所から免責が認められると、原則として借金の支払い義務はなくなります。ただし、税金や国民健康保険料などの公租公課、養育費、悪意による不法行為の損害賠償金などは「非免責債権」と呼ばれ、手続き後も支払い義務が残ります。借金の内容によってなくなるものと残るものがありますので、事前にしっかり確認することが重要です。
ギャンブルや過度な浪費が原因の場合、原則として「免責不許可事由」に該当し、借金が免除されない可能性があります。ただし、実際には裁判所が諸事情を考慮して「裁量免責」という形で免除を認めるケースも多くあります。借金に至った経緯を誠実に説明し、家計の改善状況を示すことが免責につながる重要なポイントとなります。
生活に必要な財産がすべて失われるわけではありません。99万円以下の現金、残高20万円以下の預貯金、生活に欠かせない家財道具などは手元に残すことができます。一方、マイホームや価値が20万円を超える自動車、解約返戻金が20万円を超える生命保険などは処分され、債権者への支払いに充てられます。手元に残せる財産については事前の調査と評価が必要です。
一定以上の財産がない場合などに比較的簡単な手続きで終わるのが「同時廃止」、財産の調査や換価が必要な場合に破産管財人が選任されるのが「管財事件」です。ギャンブルが原因の場合や個人事業主、一定の資産がある場合は管財事件になりやすく、最低20万円の予納金が必要になります。事前の調査によりどちらの手続きになるか見通しを立てることができます。
自己破産の手続き中(開始から免責許可が確定するまでの数か月間)は、生命保険の外交員、警備員、宅建士など特定の資格を用いた職業に就くことが制限されます。ただし、免責許可決定が確定して復権を得れば、これらの制限は解除されます。一方、任意整理や個人再生ではこのような職業制限はありません。資格制限のある職業に就いている方は、個人再生や任意整理を選択することで仕事を続けながら借金問題を解決できる可能性があります。
個人再生
個人再生の「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」を利用すれば、マイホームを維持しながらその他の借金を大幅に減額できる可能性があります。住宅ローンはこれまで通り支払い続け、消費者金融などの借金だけを圧縮して3〜5年で分割払いする仕組みです。ただし複雑な条件があるため、不動産の登記情報なども含めた事前の綿密な調査が不可欠です。
会社員など収入の変動が小さい方はどちらも選べますが、返済額が少なくなる傾向がある「小規模個人再生」を選択するほうが負担は軽く済むことが多いです。ただし、小規模個人再生は、借金総額の半数を超える債権者が反対するなどの場合、再生計画が認可されないため、反対する金融機関が多いと予想される場合は、債権者の同意が不要な「給与所得者再生」を選ぶ方が確実なケースもあります。他方、給与所得者再生は、会社員等定期的な収入がないと難しい場合もあり、その点の注意も必要です。
個人再生の返済額は、借金がいくらあるかという「債権額ベース」の基準と、現在持っている財産がいくらかという「清算価値(資産額)ベース」の基準を計算し、比較して決まります。さらに、選ぶ手続きの種類によっては、収入から生活費を引いた「収入ベース(可処分所得)」の基準も加わります。これら複数の基準で計算された金額のうち、「一番高い金額」が最終的な返済額となるルールが法律で定められています。
小規模個人再生の場合、「借金の総額から計算される最低返済額(債権額ベース)」と「今持っている財産の合計額(清算価値ベース)」の2つを比較し、高い方の金額を支払います。債権額ベースでは、例えば借金が500万円〜1500万円ならその2割(最低100万円)など大幅に減額されます。ただし、預貯金や車の価値などの財産が多い場合は、その財産の価値以上の金額を支払わなければならないため、事前の正確な財産調査が必要です。
給与所得者再生では、小規模個人再生の2つの基準(債権額ベースと清算価値ベース)に加えて、「収入から最低限の生活費などを引いた余裕額の2年分(収入ベース)」という3つ目の基準が追加されます。そして、これら3つのうち最も高い金額を支払うことになります。給与所得者再生は債権者の反対があっても手続きを進められるメリットがありますが、この収入ベースの基準が加わることで、小規模個人再生よりも返済額が高くなる傾向があります。